う蝕により抜髄を始めた.今日どこまでやるか.

(複根管,彎曲根管などで時間のかかる抜髄への対応)

今日どこまでやるかは,局所麻酔の効き具合,症例の難易度,診療時間によ

り異なります.

処置中に判断するのではなく,事前に問診,口腔内診査,画

像所見,診療時間からある程度決めておくようにします.

⑪抜髄初回にどこまでやるか

抜髄は,理想的には初回で歯髄組織をすべて除去します.保険診療でも,局所麻酔の費用

は初回の抜髄時のみ算定可能であり以降は算定できません.しかし,実際は中断し次回に

再開せざるを得ないことがよくあります.保険診療では歯種により抜髄の点数は同じです

が,患歯や患者の状態はまちまちで,症例により難易度が異なるからです.

もちろん,術者の力量も影響します.局所麻酔が効きづらそうな症例,処置に時間がかかりそうな症例は,無理に抜髄の完了を目指さない方がよい

齪蝕や歯冠破折といった歯冠部からの感染が原因の歯髄炎では,歯冠部の歯髄のみ除去す

るだけでも,抜髄と同程度に疼痛が消退することが報告されています.術後疼痛のもとに

なるので,探針や根管形成器具を根管内に挿入しないようにします.

つまり,

あれこれ試みたうえに諦めるのではなく、余計な刺激は加えずに,歯冠部の歯髄のみ除去すると

早々に決定するのがコツです“また,ラバーダム装着,緊密な仮封により,さらなる汚染を予

防するのも必須です.

麻酔の効きが悪く露髄に至らない場合は窩洞内に絞ったカンファーカルボール(CC)

綿球を置き,緊密に仮封します.次回には必ず麻酔がよく効くようになります.

歯内療法に用いられる薬剤

う窩消毒薬、歯髄鎮静・鎮痛薬

略称はCC

フェノール・カンフルともよばれる

消毒・消炎鎮静を目的

・フェノ-ルカンフル(CC)、パラモノクロロフェノ-ルカンフル(CMCP)

根管開放時に禁忌

・ホルモクレゾ-ル(FC)、ホルマリングアヤコ-ル(FG)

急性症状のため根管開放するとき

・ヨ-ドチンキ

抗生物質

・クロラムフェニコ-ル(CP)

処置の時間がない場合でも,局所麻酔をして鎮痛薬を内服するだけでも,痛みが消退する

ことが報告されています.また,鎮痛剤の投与のみで終了する場合は‘たとえエビデンスに

基づいた適切な行為であっても,患者は「こんなに痛いのに何もしてくれなかった」と思い

がちです.なぜ処置をしないのかを説明し,理解を得ます.患者の苦痛へのいたわりの言葉

を添えて次回の予約をとり,患者を安心させましょう.

②事前に考慮すべきポイント

学生時代の臨床実習や研修医時代の診療では,万全の準備をして取り組むことが求められまし

た.

例えば,深い齪蝕の治療が予定されているとします.真面目な先生ほど,レジン充填で済

む場合,覆髄する場合,抜伽になる場合を想定し,必要な器材をすべて用意しておくでしょ

う.もちろん,準備不足は論外で,準備をし過ぎることが悪いというのではないのですが,混

乱を招くのもまた事実です.

「今日はどこまでやるか」は,「今日はこれ以上はしない」という事でもあります.「やるこ

と」以上に「やらないこと」を着手前にある稗度決めておくことは,処置を進めるうえで非常

に有利になります.

余分な予習をしなくて済み,余計な器材の準備が不要になり,術者の頭

の中もブラケットテーブルの上もスッキリし治療に集中できるようになり,治療時間をオー

バーすることもなくなるからです.

臨床では‘やみくもな真面目さよりも,的碓な診断力が求められます.事前に判断する際

のチェックポイントを,に示します.麻酔の効きが悪いことが予想される場合は,

処置前に鎮痛剤を服用してもらうのも効果的です.

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