急性炎症で痛がっている患者さんに抗菌薬を投与しした、いつ効果がでるか。

抗菌薬が効力を発揮して患者さんの自覚症状が改善するまでの期間はおおむ

ね3日が目安です.

それ以内の期間で疼痛が改善しないからといって薬剤の変更はあまりやらないほうがいいかもしれません

⑪臨床のポイント

歯性感染症の病巣である顎骨は抗菌薬の組織移行率が低いために,感染根管治療や切開排

膿などの局所処置を併用することが極めて重要です.

外科的処置(感染根管治療を含む)をすることなく抗菌薬投与のみで対応する症例は少ないでしょう.

特に重篤な感染症では嫌気性菌の関与が鍵となっています.切開排膿などの消炎処置を行い,酸素と触れさせることにより嫌気的な環境を改善することが極めて重要です.

歯性感染症に対する抗菌薬効果判定の目安は3日とし,増悪の際は.外科的消炎処置の追加他剤への変更を考慮すべきであり,高次医療機関に紹介する必要があります.

②チェックすべきポイント

歯性感染症は表1の4群にわけて考える必要があります.

一般の歯科診療所で対応可能なのは1群の歯周組織炎と2群の歯冠周囲炎までと考えま

しょう.3群以上に移行している症例においてはすぐに高次医療機関に紹介すべきでしょ

う.

③具体的な抗菌薬の選択について

主要原因菌である口腔連鎖球菌および嫌気性菌に強い抗菌力をもつ抗菌薬を選択する必要

があります.炎症の重篤化に伴い偏性嫌気性菌の関与する割合が高くなるために,それらの

1群〔歯周組織炎〕

2 群 〔歯冠周囲炎〕

3群〔顎炎〕

4群〔顎骨周囲の蜂巣炎〕

歯髄感染から起こる根尖性歯周組織炎と辺縁性歯周組織炎(歯槽膿漏)

があるこれらが原因となり,歯肉膿瘍,歯槽膿瘍,口蓋膿瘍などを

形成する.

主に埋伏智歯が原因である.埋伏智歯の歯冠周囲に,発赤,腫脹,排

膿が認められる.膿瘍が形成されることは少ない.歯冠周囲炎が原因

で顎炎,蜂巣炎に炎症が進展することがある.炎症が顎骨周囲の隙に

波及すると開口障害嚥下痛が認められる.

1群の歯周組織炎,2群の歯冠周囲炎から波及する骨炎および骨髄炎が

含まれる1群および2群に比べて重症で,骨膜下のドレナージおよ

び注射用抗菌薬を使用する症例が多い.骨髄炎は,急性,慢性,硬化

性があり,下顎骨に多く発症する.

1群~3群から炎症が波及する.舌下隙,顎下隙オトガイ下隙,翼

突下顎隙,側咽頭隙,咽頭隙などの隙感染症を含む.隙のドレナージ

が重要である.注射用抗菌薬を使用する症例が多い.

菌はペニシリン・セフェム系抗菌薬の主要構造であるβ-ラクタム構造を破壊するβ-ラクタ

マーゼを産生するようになります.亜疵の歯性感染旅ではβ-ラクタマーゼ阻害薬配合抗菌薬

を選択する必要があります.

1)1群または2群(軽症から中等症例)

・アモキシシリン(サワシリン)1回250mgを1日3,4回服用

ペニシリンアレルギーがある場合は,

・アジスロマイシン(ジスロマック)1回500mgを1日1回3日間服用

・クラリスロマイシン(クラリス”)1回200mgを1日2回服用

2)3群または4群(重症例)

・アモキシシリン/クラブラン酸(オーグメンチン配合錠”)1回250mgを1日4回服用

ペニシリンアレルギーのある場合は,

・クリンダマイシン(ダラシン)1回150mgを6時間毎に服用

・シタフロキサン(グレースビット州)1回100mgを1日2回服用

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