根管上部の事前拡大と再帰ファイリングを組み合わせた根管洗浄を頻回に行
うことによって,切削片の目詰まりやその溢出による術後の不快症状が予防
されます.
⑪臨床のボイント
根管拡大中の目詰まりは,ファイリングによってできる象牙質切削片が根尖部に押し込ま
れることで生じます.その切削片は多くの場合に感染性であり,一部は根尖孔外へと溢出す
るため,術後の疼痛や不快症状につながることも示されています.一度目詰まりを起こす
と,そのリカバリーは簡単ではありませんし,ファイルを大きく回転させて押し込むという
ような無理なファイル操作では,すぐにステップを作るリスクが生じてしまいます.
切削片の根尖部への貯留やその流出を防ぐために,また同時に切削片中の細菌や操作中の
ファイル自体の消毒さらにファイルと根管壁の潤滑剤としての役割を持たせるために根
管拡大中は常に十分な量の次亜塩素酸ナトリウム液を根管内に満たした状態で操作すること
が有効とされています.
また,根管洗浄の効果を高めるために根管口付近の事前拡大(プリフレアリング)を行い,ファイルと根管壁の間に切削片や薬剤が流れるスペースを作ること,そして数回のファイリング後.またはファイル交換の度に,その都度必ず次亜塩素酸ナトリウム液による根管洗浄と10号程度の細いファイルによる再帰ファイリングを省くことなく繰り返すことにより,目詰まりを予防することができます.このような基本操作を何よりも大切に,確実に行いましょう.
②根管口部の事前拡大の有効性
挿入したファイルと根管の間に隙間がないようなタイトな状態でファイルを出し入れす
るならば‘切削片は容赦なく根尖部に押し込まれてしまいます.NiTiロータリーファイルに
よる根管拡大形成テクニックにおいて重要とされているのが,根管口部のプリフレアリング
ハンドファイルでの根管拡大においても,この考え方を踏襲し根管口付近のエンド三角
を除去し,ストレートラインアクセスの確立を行いながら.つまり根管上部から徐々に根尖
に向けて拡大を行った後で切削片を効果的に除去しながら根尖部にファイルを到達させる
方法が有効です.
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