歯内療法においてラバーダム装着ができない歯は,保存不可能と診断されま
す.隔壁を作製し,ラバーダム装着ができる状態にしましょう.
⑪臨床のポイント
歯内療法においては,診査ののち予後判定を行いますが、根尖病変の大きさだけではなく
残存歯質量も予後に大きく関係しています.よって,感染歯質を除去しどのくらいの健全な
歯質が残っているのかよく観察しましょう.基本的にラバーダム装着ができないような歯は
根管治療を行うことができませんので,保存不可能と診断されます.
歯冠崩壊している歯をラバーダム装着できるようにするには,以下のような方法がありま
す.
l)隔壁作製.
2)歯冠長延長術(クラウンレングスニング),
3)矯正的挺出(エクストルージョン)
②概略的なことについての説明
まず,歯冠部感染歯質をう蝕検知液などを用い可視化し,徹底的に除去しましょう.その
際できるだけ歯肉を傷つけないように注意します.もし歯肉から出血している場合は止血
剤を用い完全に止血します.歯肉溝へ圧排糸を挿入することができる場合は,隔壁作製が可
能です.隔壁作製ができないような歯は保存不可能と考えた方が良いでしょう.浸潤麻酔下でルートプレーニングを行うだけでも歯冠部健全歯質を獲得できることもあります.
1)隔壁作製
最も一般的な方法です.圧排糸を歯肉溝に挿入し,歯肉を少し下げ,接着操作が行える状
態にしフロアブルレジンを築盛していきます.
2)歯冠長延長術(クラウンレングスニング)
外科的に歯肉と骨を削除し,歯肉縁を根尖側に移動する方法です.しかしこの術式の適応
は,前歯または小臼歯,すなわち骨を削除しても分岐部が露出しない歯に限られます.そし
てクラウン歯根比がl:2よりあまり大きく変化しないことが望ましいでしょう.
3)矯正的挺出(工クストルージヨン)
根尖病変が大きくない場合は,矯正的挺出も可能です.しかしこれも歯冠長延長術と同様
適応に限りがあります.すなわち単根歯に限られます.そして,挺出後歯周靭帯を切除した
り保定期間が必要など,治療に時間がかかります.
③隔壁作製
隔壁作製のポイントは。防湿と確実な接着操作です.
①術前,一部歯肉縁下にう蝕を認めラバーダム防湿しても確実に防湿ができない状態
②浸潤麻酔を行い,電気メスで歯肉切除を行います.
③歯肉切除を行ったのち,歯肉溝に圧排糸を挿入します
④確実な接着操作を行います
⑤可能であればマトリックスを使用し,フロアブルレジンで隔壁を作製していきます
⑥隔壁作製後この状態であれば簡単にラバーダム装着を行うことができます.
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