歯性感染症と薬物療法
1)歯性感染症は、口腔連鎖球菌および
嫌気性菌の複数菌感染である。
歯性感染症は、1群から4群に分類される。
■1群(歯周組織炎):歯髄感染から起こる根尖性歯周組織炎と辺縁性
歯周組織炎(歯槽膿漏)がある。これらが原因となり、歯肉膿瘍、歯
槽膿瘍、口蓋膿瘍などを形成する。
■2群(歯冠周囲炎):主に埋伏智歯が原因である。埋伏智歯の歯冠
周囲に、発赤、腫脹、排膿が認められる。膿瘍が形成されることは
少ない。歯冠周囲炎が原因で顎炎、蜂巣炎などに炎症が進展するこ
とがある。
ロ3群(顎炎):1群の歯周組織炎、2群の歯冠周囲炎から波及する
顎骨炎および顎骨骨髄炎が含まれる。1群および2群に比べて重症
で、骨膜下のドレナージが必要である。
■4群(顎骨周囲の蜂巣炎):1群~3群から炎症が波及する。舌下隙、
顎下隙、オトガイ下隙、翼突下顎隙、側咽頭隙、咽頭隙などの隙感
染症を含む。隙のドレナージが重要である。
感染病巣である顎骨、膿瘍腔など口腔組織への抗菌薬移行濃度は
低いので、感染根管処置波動を触知する症例では膿瘍切開などの消炎
処置を行う。
歯性感染症に対する抗菌薬効果判定の目安は3日とし、増悪の際
は外科的消炎処置の追加、他剤への変更を考盧する
保険メモ
①歯周組織炎で抗菌薬処方時は、P急発の傷病名が必要
②Pulでは抗菌薬の処方不可。Per病名等、必要
③埋伏歯病名のみでは抜歯時・抜歯後を除き、抗菌薬の処方は不可。
Pericoなどの炎症病名が必要
知っておきたい投薬・キーポイント
日常臨床で遭遇する頻度の高い1群(歯周組織炎)、
2群(歯冠周囲炎)への投薬
第1選択薬
アモキシシリン(サワシリン、パセトシン)
1回250mgを1日3~4回3~7日間服用
(小児は1日量20~40mg/kgを3~4回に分割)
アジスロマイシン(ジスロマック)
1回500mgを1日1回3日間服用
第2選択薬
シタフロキサシン(グレースビット)
1回100mgを1日1~2回3~7日間服用
ファロペネム(ファロム)
1回150~200mgを1日3回3~7日間服用
(小児は1日量15mg/kgを3回に分割)
留意点:
①小児でペニシリンアレルギーのある場合マクロライド系薬あるいは
セフェム系薬を用いる。
ただしペニシリンアレルギー患児の約15%にセフェム系薬にもアレ
ルギーを有するので注意が必要である。
②マクロライド系薬の小児における歯科適応薬
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