深い歯周ポケットが見つからない

プロービング検査時に深い歯周ポケットを見つけるこ
とができません.


理由としては,
①単にプロービング圧が弱い,

②プローブ先端が歯石で止まる,
③歯冠部のオーバーカントゥアが強いため入らない,などが考えられます.
デンタルエックス線写真などほかの検査結果もよく参考にしましょう.


歯周病の「つめあと」を知る
歯周病の治療を希望して来院する患者さんは,後を絶ちません.研修歯科医の皆さんでも,
最初に担当した患者さんの主訴が「歯石をとってほしい」や「歯ぐきが腫れた」など,歯周病
の症状を訴えるケースが多いのではないでしょうか?歯周病は歯肉,歯槽骨,セメント質
歯根膜といった歯周組織に炎症が生じた状態を指します.腫瘍マーカーを用いて悪
性腫瘍を診断する場合と違って,歯周病の診断はもっぱら臨床症状から判断することが多い
です.つまり皆さんが日々計測しているプロービング深さや歯肉退縮量から算出されるアタッチメントレベルは「歯周病のつめあと」を,

一方.出血点は「現在の炎症の状態」をみているに過ぎません.血清抗体検査や歯周
病原菌検査の方法は進歩しているものの,設備やコストの面で広く普及しきっているとはま
だ言えません.このため。歯周プローブを使った歯周組織状態の把握,日常臨床の広範囲をカバーするための必須のスキルといえるでしょう.

しかし,指先の感覚を研ぎ澄まし,根面の状態を探りあてることができるようになるためにはトレー
ニングが必要であり,計測ミスに陥らないためにはいくつかの注意点があります.


②ブロービング深さを計測し誤る要因とは?
1)適正なプロービング圧でない場合(弱すぎるプロービング圧)
適正なプロービング圧は25gとされています。健康組織では50gの荷重でも抵抗を示すのに対し,病的組織では容易に出血してしまうという特性の違いを理解しましょう

また,慢性歯周病は無痛性病変の代表格ともいわれます.しかし,いくら無痛性といっても初診時のプロービング検査は活動性の炎症層を金属の針で触るのですから,患者さんは当然痛みを訴えます.術者の経験が浅い場合,この患者さんの痛みに気を取られ,必要以上に軽くプロービングしてしまうこと
で検査値を読み誤る場合が多く見受けられます.

一方,正確に測定しようとするあまり,新来の紹介患者さんの検査時に力が入り。初回の検査がとても痛かったのでもう通いませんという電話を受ける可能性があります.

上手にプロービングするための方策としては,医療従事者相互に実習を行い,術者は患者さん役の表情をよくみることや,感想をフィードバックしてもらうなどして適正な力のかけ具合をマスターしましよう、


2)歯肉縁下歯石に阻まれる場合
歯周プローブの先端が硬いものにあたってとまり,ポケット底だと誤って認識する場合で
す.その硬いものとは,縁下歯石,不正な根面形態、補綴歯であれば適合不良部の段差,セメ
ントの取り残しなどを指します.これらはどれもプラーク付着の局所的因子ですから,ほぼ
すべて炎症が存在していると考えてよいでしょう.プロービング深さが3mm程度なのに比
較的出血量が多かった場合などは,以上のような原因を疑いましよう.


3)歯の豊隆やクラウンのカントウアが大きい場合
日本人の平均的な歯冠形態では,プロービングが困難なほど豊隆が強いという例はあまり
見かけませんが,超高齢社会ということもあり大きな摩耗を伴った露出根面に遭遇すること
が予測されます.この場合は相対的に歯冠が張り出すことになるため,うまくプロービング
できません.クラウンの過度なカントウアなども注意が必要です.不適合な補綴装置がプ
ラークリテンションファクターと判断されれば,除去しテンポラリークラウンなどで置き換
えて歯周組織の安定化に努めます.昨今では,歯周病治療後にインプラント治療に移行す
ることが多くなり,インプラント歯周組織にもプロービングが必要だといわれていますが,
インプラント上部構造を装着したままポケット深さを正確に測定することはさらに困難です.


ブロービング深さ≠アタッチメントレベルであることに注意する
歯周組織破壊の指標となるのはアタッチメン|、レベルであり,CEJやクラウンマージンか
らポケット底までの距離を指します.一方、ブロービングデプスは同じ4mmでも状況(仮
性ポケットなど)によって意味あいが違いますので用語の再確認をしておきましょう.

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