舌痛症とは、口腔内外には器質的異常所見が認められないにもかかわらず、舌あるいは口蓋、頬粘膜などに「ヒリヒリ」「ピリピリ」とした痛みを訴える症候群である。「火傷したような」痛み、「舌が歯に擦れているような」痛みと表現されることが多い
①痛みの出現部位は一定でなく、舌、口蓋口唇など口腔粘膜のあらゆる部位に出現し、時に移動する
②50,60代以降の女性に頻発する
③食事時には支障がないことが多く、アメ、ガムを口腔内に入れていると痛みが軽減する
④日内変動性があり、朝よりも夕方に痛みが増すことが多い
⑤何かに夢中になっている時や睡眠時は痛みを生じないことが多い
⑥約60%で口腔乾燥感や味覚障害を伴う。口腔内に「ベタベタ」した感じや「渋柿の渋が張ったような」感じを訴えることもしばしばある
比較的軽症の舌痛症の場合に処方する薬
プレガバリン(リリカカプセル)
クロナゼパム(リボトリール錠)
トラマドール塩酸塩(トラマールカプセル)
各々最少単位を就寝前1回から開始し、眠気やふらつきなどの副作用が容認できれば、1週間ごとに疼痛の寛解が得られるまで少量ずつ漸増する。軽症だから治りやすいとも限らず、「まだ痛みが残る」と遷延することもある。
上記の薬剤は保険適応病名に「末梢性神経障害性瘤痛」や「慢性疼痛」があるが、舌痛症としては保険適応外である。
中等症以上の舌痛症の場合に処方する薬
【アミトリプチリン(トリプタノール錠)1回10mgを1日3~4回
3~6カ月以上服用】保険適用外
プレガバリンなどの上記薬剤の服用や増量が困難、効果発現が不十
分の場合は、アミトリプチリンへの変更を検討する
処方時は必ず全身的既往歴を確認する。とくに精神疾患の既往をもつ患者には薬物反応性が概して不良である。閉塞隅角緑内障、心血管系、糖尿病既往患者などは、かかりつけ医への対診が必須である。高齢者や循環器疾患既往患者には三環系抗うつ薬(TCA)を避け、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)等の投与から開始することが望ましい。
投薬のポイント
舌痛症に抗うつ薬等を処方する目的は、あくまで口腔内の「痛み」の治療のためであり、「うつ病」を歯科で治療するのではないことをしっかり説明する。
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