自己免疫性水庖症は、上皮細胞間あるいは上皮細胞と基底膜の結合
に関係する分子に対する自己抗体によって結合が障害され水庖が生じ
る。上皮内水庖を形成する天庖瘡群と上皮下水庖を形成する類天庖瘡
群に分けられる。
天萢瘡
天庖瘡群の代表的なものは尋常性天庖瘡であり、デスモグレイン1
、デスモグレイン3に対する自己抗体によって生じる。
粘膜優位型と粘膜皮層型があり、いずれも口腔粘膜に広範囲に水庖、
びらんを生じる。
診断:口腔粘膜では、水庖を見ることはほとんどなくびらんが主体である。
びらん周囲の一見健康と思われる粘膜に小綿球を当ててこするか、あ
るいはエアーをかけると上皮が容易に剥離する(ニコルスキー現象)ことが特徴的である。粘膜優位型は口腔粘膜病変のみを示し、抗体はDsg3だけである。粘膜皮虐型は口腔粘膜と皮盧に
病変を生じ、抗体はDsgl、3の両方に反応する。
皮層病変を伴う場合は必ず皮層科医の診察を受ける。
類天庖瘡
類天庖瘡群では水庖性類天庖瘡が代表的であるが、皮盧症状が主体
である。粘膜類天庖瘡は主に口腔粘膜、眼粘膜、開口部粘膜に水庖、
びらんを生じ、皮層病変は生じないか生じてもわずかである。抗原タ
ンパクの違いにより抗BP180型、抗ラミニン332型に分けられる。
症状は皮膚症状が中心であるため、治療は
ステロイド全身投与を主体に皮虐科専門医によって行われる。
歯科領域で重要なのは、粘膜類天庖瘡である。口腔粘膜では歯肉が
好発部位で、小水庖やびらんを生じる。上皮が容易に剥離するため、
剥離性歯肉炎と診断されることもある。病理組織学的には上皮下水庖
である。明確な診断基準はないが、臨床症状、病理組織学的所見、蛍
光抗体法、免疫プロット法により診断する。自己抗体は抗体価が低く
検出が困難なことがある。
天疱瘡:第1選択薬 ステロイド(通常プレドニゾロン)
初期投与量1.0mg/kg/日(通常60mg/日)
類天庖瘡:まず試みるべき薬物療法(保険適応)
ステロイド軟膏
デキサメタゾン(アフタゾロン口腔用軟畜0.1%)
(デキサルチン口腔用軟膏1mg/19)
トリアムシノロンアセトニド(ケナログ⑧口腔用軟言0.1%)、など
含嗽剤
ベンゼドニウム塩化物(ネオステリングリーンうがい液0.2%)
アズレンスルホン酸(アズノールうがい液4%)、など
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