浮腫は、様々な原因から皮下や粘膜下組織の細胞間隙への体液の過
剰貯留により生ずる病態で、日常臨床では頻繁に遭遇することが多い。
なかでも口腔、顔面領域に好発する血管性浮腫は、アレルギー反応を
含む様々な原因から、炎症性メデイエーターの作用により毛細血管透
過性が冗進し、特発性に浮腫を生じた病態で、その原因・誘因により
治療方針が異なるため、鑑別診断が重要である。1882年、Heinrich
Quinckeが提唱したことから、一般的にクインケ浮腫といわれている。
●血管性浮腫と鑑別疾患
1)アレルギー性血管性浮腫
IgE抗体を介し、ヒスタミンなどの生理活性物質が作動する|型ア
レルギーにより生ずる症状で、蕁麻疹を伴うことが多い。原因は、主
に薬物や食物などにより誘発される。
●血管性浮腫の治療
血圧下降等のショック症状や喉頭浮腫による気道閉塞が疑われた場合
①気道の確保酸素吸入
②エピネフリン(アドレナリン)0.01mg/kg皮下筋肉内または静脈内
投与エピペン注射液O]5mg/0.3mg
③静脈確保、輸液
④抗ヒスタミン薬静注
重症例のみ副腎皮質ステロイド薬の静脈投与
可及的速やかに、専門医への救急搬送(皮膚科、救命救急センター)
が望ましい。
軽症例
顎顔面領域に限局した典型的なクインケ浮腫は、通常1~3日程度
で自然消退するため、軽度のものでは経過観察することもある。原因
薬剤やアレルゲンへの曝露が疑われるときには、薬剤の中止、誘因の
排除を心掛ける。
薬物治療の対象としては、軽症では第1世代H1受容体拮抗薬であ
る抗ヒスタミン薬の内服を行い、副作用として眠気が強い場合は、第
2世代H1受容体拮抗薬を用いることがある。なお、近年、副腎皮質
ステロイド薬は重症例以外では用いない傾向にある。
軽症の血管性浮腫
クロルフェニラミンマレイン酸(ポララミン錠)〔保険適応〕
成人1回2mgを1日1~4回経口投与
クロルフェニラミンマレイン酸(アレルギン散1%)〔保険適
応〕成人1回2~6mgを1日2~4回経口投与
塩酸ジプロヘプタジン(ペリアクチン錠4mg)〔保険適応〕
成人1回4mgを1日1~3回経口投与
①軽症例や特発性血管性浮腫では自然消退するので、必ずしも投薬を
必要としない。
②副腎皮質ステロイド薬は重症例のみ使用する。難治例で、ステロイ
ド薬を用いる場合は、皮膚科等の専門医対診が望ましい。
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