上顎洞炎と薬物療法
上顎洞炎は副鼻腔炎の-つ,多くはウイルスによる風邪症候群
の二次感染としての急性であり、慢性のものはアレルギーなどで鼻腔
や上顎洞粘膜がうっ血し、自然孔からの粘液の排出困難によって生じ
ることが多い。
歯性上顎洞炎の多くは上顎大臼歯の根尖病巣に起因するもので
あったが、近年ではインプラント治療に関連する上顎洞炎が増加して
いる。上顎洞炎に適切な初期治療が行われないと慢性化し、上顎洞
の炎症が前頭洞、筋骨洞、蝶形骨洞といった副鼻腔へ波及し、重篤な
感染症になることもある。
歯性感染による上顎洞炎にはβ-ラクタム系薬である
ペニシリンやセフエム系薬、あるいはクリンダマイシンなどの抗菌薬
が効果的である。なお、急性副鼻腔炎治療ガイドライン、ペニシリン系抗菌薬であるAMPC(サワシリンまたはABPC(ビクシリン)が抗菌スペクトラムと組織移行性
などから第1選択薬とされ、臨床効果と起炎菌から効果が認められな
い場合にセフエム系抗菌薬を選択することが推奨されている。
歯性上顎洞炎では、抗菌薬療法とともに原因歯に対する根管治療
や抜歯などの処置、あるいは洞内に迷入したインプラントや拡散して
いる骨移植材などの異物の除去が必要となる。その際の診断、病態や
治療経過の把握などに、現在ではコーンビームCT(CBCT)が有用に
なっている。
薬物などによる保存的治療に抵抗する歯性上顎洞炎に対しては、
これまで、犬歯窩からアプローチし、病的な洞粘膜の除去および対孔
を下鼻道に設置する上顎洞根治術が行われてきた。しかし、耳鼻科領
域では1990年代から内視鏡下鼻副皇腔手術が標準術式として行われ
ている。これにより、自然孔の拡大が経鼻的に低侵襄・短時間に行え、
さらに迷入した歯根やインプラントなども同時に除去できるようにな
り、患者の負担が軽減している。
注意点(歯性上顎洞炎治
療のアルゴリズム、図。)
①上顎洞炎が疑われた場
合、まず歯性であるか、
そして原因歯はどれか、
さらに洞内の含気性や洞
粘膜の肥厚をCBCTやCT
などの画像所見から診断
する
②急性炎症がある場合は、AMPCやABPCなどの抗菌薬の投与ととも
に、原因歯などに対する処置を併用する。
③上顎洞炎として適応が認められている内服の抗菌薬は、MlNO(ミノマイシン⑧)で
あるが、副鼻腔炎としてはAZM(ジスロマック)、FMOX(フロモックス⑧)などが適応。
④原因歯に対する処置後、慢性的な上顎洞炎症状が継続する場合は、
耳鼻科での対応を検討する
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