象牙質知覚過敏症
関連痛や幻歯痛などの例外を除き、一般に歯の痛みは歯およびその
周囲組織に分布する痛覚神経線維の受容器(自由神経終末)が刺激され
ることによって惹起される。
歯肉退縮による歯根露出を
象牙質-歯髄複合体においては、伴う象牙質知覚過敏歯
痛覚を伝えるA6線維の終末は歯髄外居に分布し、さらにその一部は
象牙細管内に進入すると報告されている)。これらは象牙細管内容液
の動きに鋭敏に反応して興重し(動水力学説)、短く鋭い痛みを生じさ
せる。象牙質知覚過敏症の痛みに関与するのは、主にこれらの神経線
維である。様々な要因により開□した象牙細管が口腔内に露出するこ
と、そして炎症によって神経線維が過敏化されること等が象牙質知覚
過敏の本態と考えられる。今日の超高齢社会においては、歯の咬耗・
摩耗あるいは歯肉の退縮を伴う象牙質知覚過敏歯が頻見され、
薬物療法を含め、それらへの適切な対応が重要性を増している。
象牙質知覚過敏症の薬物療法
象牙質知覚過敏とは、明らかなう蝕や歯の破折等が認められないに
もかかわらず、外来刺激(擦過、温熱、冷熱、化学物質浸透圧、乾
燥など)が歯に加わったとき、一過性に鋭い痛みが惹起される状態
いう。象牙質知覚過敏歯では、口腔内に象牙質が露出し、その表面に
多数の開□した象牙細管が観察される。その処置法の多くは、開□し
た象牙細管の封鎖に主眼がおかれる。象牙質知覚過敏症治療薬として
は以下のものがある。
1)塩化亜鉛
8%塩化亜鉛溶液が用いられる。知覚過敏部位への単純な貼付より
も、イオン導入によって電気泳動的に亜鉛イオンを象牙細管深部へ送
り込むほうが効果的である。象牙細管内に侵入した亜鉛は、細管内の
タンパク質を変性.凝固させて外来刺激を遮断するとともに、カルシ
ウムと置換して不溶性の亜鉛化合物として沈着し、象牙細管を封鎖す
る。
2)フッ化ジアンミン銀
38%フシ化ジアンミン銀液 サホライド
化成)が用いられる。象牙質知覚過敏部位を清掃乾燥した後、薬液
の数滴を小綿球等にしみ込ませ3~4分間塗布す
る。その後、水洗して残余の薬剤を除去する本剤は象牙細管内のタ
ンパク質を凝固させ、また不溶性塩を形成することにより、象牙細管
を閉塞する。なお、患部に銀粒子が沈着して黒変するので、審美性が
求められる部位には適用されない。
3)フッ化ナトリウム
フツ化ナトリウムの5%ゲル剤(ダイアデント歯科用ゲル5%
、Fバニツシユ歯科用)が用いられる。
患部を清掃した後、綿花で清拭してから本剤の適量を取り、スパーテ
ル等で患部を覆うように塗布して整形する。次いで、綿球またはスプ
レーで水を撒布して表面を硬化させ、さらに洗口させる。十分な効
を得るためには、本剤を4~6時間以上
患部に付着させておくことが必要である。
上記の薬剤は、刺激伝導路として働く
象牙細管の閉塞あるいは機能的狭窄を
主眼としている。
コメント