歯周病
歯周病はいくつかの病態を有し、その多くは細菌感染症に含まれる
が、一部原因不明あるいは皮層科疾患の口腔内所見と考えられる疾患
とがある。
細菌感染症に含まれる疾患には歯肉炎、慢性歯周炎、侵襲性歯周炎
および壊死性潰瘍性歯周炎などがあり、その他の疾患としてウイルス
性歯肉疾患や慢性剥離性歯肉炎などがある。
●歯肉病変
歯肉病変はプラーク性歯肉炎、非プラーク性歯肉炎および歯肉増殖
に分類(2006年日本歯周病学会分類)される。
プラーク性歯肉炎
プラークが原因により引き起こされるプラーク性歯肉炎は、乳頭歯
肉あるいは辺縁歯肉に限局する慢性炎症であり、臨床症状として歯肉
の発赤、腫脹および出血である。プラーク単独性歯肉炎はプラークの
みに起因するが、全身因子関連歯肉炎として思舂期や妊娠などのホル
モンの変動によるものや、白血病、糖尿病などの疾患に継発する歯肉
炎がある。
歯肉炎に関連する細菌は、主にグラム陽性の球菌や桿菌であるが、
プラークが成熟するに従いグラム陰性菌が増加する。原因であるプラークを除去することで正
常な歯周組織に回復できる可逆性疾患であるが、放置すると歯周炎に進行する。
■治療
口腔衛生指導によるプラークコントロールが最も重要であり、歯石
の除去等を適宜行うことで改善が可能である。補助的に洗口剤等を使
用することで歯肉炎の改善が促進できる。
処方例
【グルコン酸クロルヘキシジン(ConCoolF)1日数回ブラッシング
後に含嗽】
【ベンゼトニウム塩化物(ネオステリン⑧グリーンうがい液0.2%)1日109
数回ブラッシング後に含嗽】
■炎症が強く深い仮性ポケットが存在する場合
【ミノサイクリン塩酸塩(ペリオクリン、ペリオフイール):シリンジ週1回4mm以上の歯周ポケットに注入4回連続投与】
非プラーク性歯肉炎
プラーク細菌以外の感染(ウイルス感染、真菌感染など)により生じ
る歯肉疾患、および粘膜皮層病変の口腔内症状として現れる歯肉病変。
1)ウイルス感染性歯肉疾患
単純へルペスウイルス、水痘・帯状庖疹ウイルス等の感染により発
症する疾患であり、歯肉、粘膜に水庖を形成するのが特徴である。抗
ウイルス薬の経口投与あるいは軟實の局所塗布により改善される。
■治療
粘膜面に形成される潰瘍による摂食障害が生じる場合には、微温水
をつけた綿球で丁寧に潰瘍面を清拭することで清潔にしたうえで抗ウ
イルス軟膏等を塗布する。
2)真菌感染性歯肉疾患
カンジダより引き起こされる口腔粘膜に生じる病変で、
主に頬粘膜、舌、口蓋粘膜、口唇粘膜にみられ歯肉に発症することは
稀である。
■治療
発症の背景には抗菌薬やステロイドの長期使用、全身抵抗力の低下
あるいは不潔な義歯の使用などがあることから、これらについて診査
し対応したうえで抗真菌剤の投与を行う。
3)粘膜皮膚病変
口腔扁平苔鮮、類天庖瘡の口腔内所見として歯肉に現れた歯肉病変。
水庖形成が生じ、上皮が剥離することでびらん形成を伴うことが多い。
■剥離性歯肉炎 浮腫性紅斑や歯肉上皮の剥離によるびらん形成、潰
瘍形成、あるいは水庖形成など種々の臨床症状を示す歯肉疾患である。
閉経後の女性に多く、性ホルモンが関与した歯肉病変とも考えられる。
また、尋常性天庖瘡、類天庖瘡や扁平苔鮮といった皮層科疾患の-症
状が歯肉に現れた病変でもある。
■治療
含嗽や綿球による清拭の後、デ
キサルチンロ腔用軟膏の塗布を繰
り返す。処置開始1カ月ほどで改
善が認められた
刺激痛や瘤痛のためブラッシングが困難となり、プラークの沈着が
増加するため、微温水を用いた綿球などで丁寧にプラークや剥離した
上皮を除去する。局所の刺激因子を除去後、副腎皮質ホルモン製剤(ス
テロイド軟膏)の歯肉面への塗布を頻繁に繰り返すことで症状の軽減
を図るのが主な治療法となる。
第1選択薬
処方例
【デキサメタゾン(デキサルチン口腔用軟蕾、デキサメタゾン軟盲□
腔用、デルゾン口腔用軟實など)1日1~数回患部に塗布。
症状により適宜増減】〔びらん性口内炎適応〕
第2選択薬
【トリアムシノロンアセトニド(ケナログ口腔用軟盲0.1%、オルテ
クサー口腔用軟實など)適量を1日1~数回患部に塗布。症状により
適宜増減】〔剥離性歯肉炎適応
○トリアムシノロンアセトニド(合成副腎皮質ホルモン)配合で抗炎症効果に優れています。
○口腔粘膜に付着しやすく、また、取れにくく工夫しました。
○淡いレモンの香りで不快感なく使用できます。
○保険請求できます。
コメント