歯周炎 expert

歯周炎
歯周炎は、上皮付着が破壊されセメント質、歯根膜歯槽骨にまで
病変が進んだ疾患であり、アタッチメントロスを伴う。慢性歯周炎は
最も一般的な疾患であり、発症年齢が低く、進行速度が早い侵襲性歯
周炎、および遺伝疾患に伴う歯周炎に分類される。


慢性歯周炎
慢性歯周炎は多因子性疾患であることから、環境関連因子や宿主関
連因子について十分診査し把握することが必要である。とくに疾患の
発症・進行には、細菌因子である歯周病原細菌が大きく関わっている。
これまで口腔細菌より形成されたバイオフィルムであるプラークの機
械的除去のみが強調されていたが、細菌感染症という立場から薬物療
法の重要性が再認識されてきた。歯周病原細菌としては、
P.g.菌(Porphyromonas gingivalis)

A.a.菌(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)

P.i.菌(Prevotella intermedia)

T.f.菌(Tannerella forsythia)

T.d.菌(Treponema denticola)


■治療
歯周病の治療で最も大切なのは、機械的なプラークコントロールで
あり、ブラッシングやスケーリング・ルートプレーニング(SRP)が適
切に行われることである。墓本治療を行っても改善が認められない場
合、薬物療法を考慮することとなる。
全顎にわたり深い歯周ポケットが存在する症例では、抗菌薬の投与
が効果的であるが、薬物のみの投与ではなく機械的なプラークコント
ロールすなわちスケーリング・ルートプレーニングと同時、あるいは
SRP直後に抗菌薬の投与を行うことが重要である。


処方例
■局所的に深い歯周ポケットを認める場合
【ミノサイクリン塩酸塩(ペリオクリン歯科用軟盲、ペリオフイー
ル歯科用軟實):

侵襲性歯周炎
侵襲性歯周炎は、遺伝的な問題あるいは特定の細菌の関与により引
き起こされると考えられている。原因菌として考えられている細菌は、
A.a.菌(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)

P.g.菌(Porphyromonas gingivalis)
が関与している場合がある。これまでの若年性歯周炎および急速進行
性歯周炎は、現在その両者を一括して侵襲性歯周炎と分類している。
本疾患は上述のように特定の細菌との関連が指摘されていること、ま
た疾患の進行が慢性歯周炎よりかなり早く進むことから抗菌薬の投与
は有効であると考えられる。


処方例
第1選択薬
【レポフロキサシン(クラビツト)1錠500mg1回1錠1日1回7日分】


第2選択薬
【アモキシシリン(サワシリン)1錠250mg1回1錠1日3回7日分】
【ミノサイクリン(ミノマイシン③)1錠100mg1回1錠1日2回7日分

壊死性歯周疾患
歯肉の壊死と潰瘍形成を特徴とする歯周疾患であり、壊死性潰瘍性
歯肉炎と壊死性潰瘍性歯周炎とに分類される。これまで急性壊死性潰
瘍性歯肉炎(ANUG入あるいは急性壊死性潰瘍性歯周炎(ANUP)と呼
ばれていたが、急性症状だけを示すわけではないため「急性」を削除し
ている。背景に歯肉炎が存在すれば壊死性潰瘍性歯肉炎となり、歯周
炎が存在する場合には壊死性潰瘍性歯周炎と定義される。
本疾患の臨床所見としては、歯間乳頭あるいは辺縁歯肉に歯肉壊死
と潰瘍形成を認める。進行すると潰瘍形成は付着歯肉、頬粘膜へと広
がる。重度になると激しい瘤痛と接触痛を生じ、食物の摂取障害を生
じる。歯間乳頭部では、潰瘍形成により歯肉が欠損しクレーター状を
示すことがある。さらに、壊死・潰瘍面への灰白色の偽膜形成と、強
い口臭を伴うのが特徴である。全身的には発熱や悪寒、戦|栗、倦怠感
を伴うことがあり所属リンパ節の腫脹と圧痛が認められる。

■治療
歯肉の疼痛が激しいため、微温水を湿らせた綿球で不潔部分を軽く
清拭し、含嗽剤を応用するなど口腔内を清潔に保つようにする。その
うえで適切な抗菌薬の投与を行うことが必要である。全身の抵抗力が
落ちていることから十分休養を取ることを勧める。適切な処置が施さ
れることで、1週間程度で改善される。


処方例
第1選択薬
【アモキシシリン(サワシリン)1カプセル250mg1回2カプセル
1日3回毎食後7日間】
【ロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン)1錠60mg1回1錠
瘻痛時服用4回分】
Iベンゼトニウム塩化物(ネオステリングリーンうがい液o、2%)7日
115
3~4回含嗽】

【ジクロフエナクナトリウム(ボルタレン)1錠25mg1回2錠
瘤痛時服用4回分】
【グルコン酸クロルヘキシジン(ConCoolF)1日3~4回含嗽】



知っておきたい投薬・キーポイント

プラーク性歯肉炎
・ブラッシング後の洗口剤の応用が効果的である。
・炎症が菫篤である場合には、ミノサイクリン塩酸塩などの局所
塗布を行う。
■グルコン酸クロルヘキシジン使用に際しては、アレルギー

非プラーク性歯肉炎(粘膜皮唐病変)
■副腎皮質ステロイド剤の長期使用より、他の感染やカンジダ症
などを起こすことがあるので注意する。
慢性歯周炎
■局所的に深い歯周ポケットが存在する場合には、局所薬物配送
システム(LDDS)としてペリオクリン⑧、ペリオフィール③を用い
る。
・全顎的に深い歯周ポケットが存在し、基本治療によっても改善
しない場合には抗菌薬の全身投与も考盧する。
■アジスロマイシン投下後の下痢には、モチリンアンタゴースト
であるトリメブチンマレイン酸(セレキノン@錠100mg)の同時投
与が有効である。


侵襲性歯周炎
・抗菌薬投与に際しては細菌検査を行い、原因菌を把握を行う。
A.a.菌(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)優位な場合にはニユーキノロン系、
P.g.菌(Porphyromonas gingivalis)優位な場合にはペニシリン系やテトラサイクリン系
の抗菌薬を選択する。これ以外にマクロライド系も有効である。


・レポフロキサシンはフルルビプロフェン(フロベン)などNSAlDs
鎮痛薬との併用で、けいれんを起こしやすくなるので注意するこ
と。


壊死性潰瘍性歯周炎
。本疾患はHlV感染者に多発することが報告されており、本疾患を
疑う患者が来院した場合には注意する。
・口腔清掃が行いづらいことから洗口剤を応用する

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