頻度の高い心疾患
日常診療において遭遇する頻度の高い心疾患として以下があげられ
る。
1)虚血性心疾患
冠血管の狭窄、閉塞によって心筋への酸素供給が不足することで胸
痛が生じる疾患をいう。運動時に-時的に起こる労作性狭心症、主に
睡眠中に生じる安静時狭心症心筋壊死によって激しい痛みが長時間
続く心筋梗塞に大別される。抗血栓薬の他に血管拡張作用の強い硝酸
製剤、カルシウム拮抗薬が処方される。
2)先天性心疾患
心臓および大血管の奇形をいう。左右の心房または心室間に連絡が
生じているもの、心臓周囲の血管走行が正常と異なるものなどがある。
近年では幼少期に修復手術が行われるため歯科治療上の問題は少ない
が、放置されれば血流異常により十分な酸素を含む血液が全身に供給
できず、チアノーゼや心不全を来す。酸素の運搬能力を補うた
めに多血症となっていることが多く、血栓症を起こしやすい。そこで、
抗血栓薬や心臓の負担を減らすための利尿薬が処方される。また、心
臓弁膜症と同様に、感染性心内膜炎のハイリスク群となる。
3)心筋症
遺伝子の突然変異による心筋異常の結果、心臓の機能が低下する疾
患をいう。拡張型、肥大型、拘束型などに分類される。突然死を来す
ことがある。拡張型では血管拡張作用をもつアンギオテンシン変換酵
素阻害薬あるいは受容体阻害薬、肥大型ではβ遮断薬やカルシウム拮
抗薬が処方される。
4)不整脈
心臓の電気的興奮の異常によってリズム異常を生じる疾患をいう。
頻脈性および徐脈性不整脈に大別される。頻脈性不整脈ではβ遮断薬
やカルシウム拮抗薬が処方されるが、徐脈性不整脈ではペースメーカ
ーの挿入が行われる。
5)心臓弁膜症
心臓の4つの弁が単独または複数にまたがって狭窄、閉鎖不全を来
す疾患をいう。障害が高度であればポンプとしての能力が低下するた
め、心不全を来す。β遮断薬、カルシウム拮抗薬ジギタリス、利尿
薬などの他に外科的修復が行われていれば、抗血栓薬が処方される。
代表的な先天性心疾患
心房中隔欠損症
心室中隔欠損症
Fallot四徴症
動脈管開存症
代表的な不整脈
・頻脈性不整脈
期外収縮
心房細動
WPW症候群
心室頻拍
心室細動
・徐脈性不整脈
房室ブロック
洞不全症候群
■虚血性心疾患患者に対する局所麻酔薬
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唾先天性心疾患・心筋症・不整脈患者に対する局所麻酔薬
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心疾患患者に処方されている薬剤と歯科で投与する薬斉11の併用上の注意
代表的製剤 併用注意薬 理由
β遮断薬(インデレラル) ボスミン 血圧上昇
カルシウム拮抗薬(ニフェジピン) セファロスボリン アミノグリコシド 血圧低下
抗血栓板薬(ワルファリン) 非ステロイド系消炎鎮痛剤 出血傾向
抗不整脈薬(リスモダン) マクロライド 不整脈
利尿薬(ラシックス) セファロスポリン アミノグリコシド 腎障害
知っておきたい.キーポイント
■モニターの重要性■
有病者の診療時には、血圧計と酸素飽和度計は欠かせない。本項で
あげた虚血性心疾患、先天性心疾患、心筋症、不整脈、心臓弁膜症で
は循環動態力丁急変する可能性があり、モニター心電計による監視も必
要である
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