痛みや歯肉の腫れ・動揺の原因

痛みや歯肉の腫れ・動揺の原因がわかりません.

①炎症の程度(急性/慢性),

②部位(右/左,上/下,歯髄/歯根膜/根尖部歯周組織/辺縁部歯周組織/粘膜/その他),

③原因(細菌感染/物理的刺激/その他)

を述べることを目標として医療面接を進めましょう.


臨床のポイント
臨床経験の少ない先生は、医療面接から得られた患者の主観や診察から
得られた客観所見(objective,O)を集めることはできても,それを用いて論理的な考察,評
価することをおろそかにしがちです.患者が「上の歯が痛い」といったら,そうだ!と思い込
んでいませんか.上の歯が痛いという主観的情報(s)を吟味せずに,上の歯に問題があると
いう評価考察を導くのは誤りです


②医療面接を行いながら評価,考察することをこころがける
1)「今日はどうしましたか」「右下の歯が食事の時に痛いです」から何を考察するか
炎症の程度については,強い痛みや自発痛を示唆する言葉がみられないため,急性の炎症
の可能性は低いかもしれません.
部位は右下と言っていますから右側の可能性が高いでしょう.しかし,上下については混
乱が生じやすいため上顎の可能性も捨てられません.
原因としては食片圧入,咬合性外傷,楔上欠損で露出した象牙質表面への物理的刺激齪
蝕による‘|曼’|潰瘍性歯髄炎,慢性化I農性根尖性歯周炎といった細菌感染歯の破折などが考
えられます.


2)クローズドクエスチョンで鑑別を試みる
複数の疑いがある中から絞り込む必要がありますが.適切なクローズドクエスチョンを使
うのが効果的です.鑑別を繰り返しながら、問診終了までに炎症の程度,部位,原因について
一通り考察することを目標とします.


例えば炎症の部位について,

歯髄の炎症とその他を鑑別するために「冷たいものか熱い食物を食べてしみる感じはしますか」と問いかけてみます.

患者が「冷たいものにしみてしばらく弱い痛みが続くのです.」などと答えれば,歯髄炎の可能性が疑えます

次に歯髄炎の原因を探っていきます.「どの歯が痛いかわかりますか.そこの辺りに食べ物がつまるなどはありますか」などと尋ねると,

「右下の奥から2番目の歯です.競近食べ物がつまりやすくなりました.」と,う蝕が推測できることもあります.


3)診察
診察では客観所見を得ることができますが,その際にも問診での評価、考察(A)と照らし
合わせていきましょう.
問診から齪蝕による歯髄炎を疑うのであれば.視診にて齪窩を確認します.確認できなく
ても|嫌接面などに疑いがあれば,評価(A)はそのままにして,「エックス線写真検査を実施
する」という計画(plan,P)を立案すれば良いのです.もし視診にて齪蝕を疑う所見がなけれ
ば歯髄炎を惹起する齪蝕以外の破折などにも範囲を拡げて,検査を進めることになります.


4)診断
急いで診断名を付ける前に,

①炎症の程度,

②部位,

③原因を整理しましょうそして

S,0,A,Pを上級歯科医に報告するつもりで簡潔に記し,考察に矛盾や飛躍がないか確認しま
す.ここまでの過程に誤りがなければ,ほぼ確実に診断名にたどり着くはずです.


③鑑別のためのキーワード
同一の疾患でも炎症の程度や範囲によって旅状や所見が異なること,逆に異なる疾患で類
似の症状や所見が現れる場合があることに留意して診断する必要があります.その中では,
比較的鑑別のヒントとなるキーワードを以下にあげます.総合的に判断して正確な診断を目
指してください.


①炎症の程度
急性:発熱がある,自発瓶牽リ|性の痛み,痛みが急に強くなってきた
慢性:経過が長い,痛みの変化が少ない,違和感軽度の誘発痛


②部位
歯髄:冷温または甘い食物などにしみる
歯根膜:咬みしめると痛い,硬いものを食べた後から痛みが生じた
根尖部歯周組織:咬むと痛い,歯の動揺歯肉の発赤,歯肉の腫脹根尖部圧痛,瘻孔
辺縁部歯周組織:歯の動揺深い歯周ポケット,歯肉の発赤,歯肉の腫脹,瘻孔


③原因
過剰な力:フレミタスの触知
破折:歯の一部のみの動揺現局性の深い歯周ポケット


要参照の分野
詳lllな診断,治療方法については以下の分野を参照してください
診断学,保存修復学,歯内療法学,歯周病学,口腔外科学

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