プロービング値が大きいが歯周外科手術の適応かどうか


目安は,歯周ポケット深さが4mm以上で出血を伴う場合です.それ以外
にも骨欠損状態がどうなっているかも重要な判断材料となります.


歯周病治療は,最低でも6カ月,ケースによっては1年以上もすると
いえるのではないでしょうかメインテナンスを含むとすれば,患者さんとの関係は一生続
くこともあるでしょう.中等度以上の歯周病治療では,長期間にわたる動的治療のなかで治
療計画が迷走しないように常に現在地点をチェックする必要があります.今回のテーマは歯周外科治療に進むかどうかの判断です.

標題のような疑問がでるのは歯周基本治療が終了している段階ですが。

口腔内の状況を見渡すとおおよそ,

①歯肉の炎症症状は改善している,

②予後不良の歯は抜去されている,

③合わない修復物が除去されテンポラリークラウンに置換されている,

といったシチュエーションが考えられます.


②歯周外科治療を行う目的
歯周外科治療には切除療法,組織付着療法,歯周組織再生療法,歯周形成手術などがあげ
られますが’),ここではより頻度の高いフラップ手術を例にとって説明します.そもそも歯
周病は多因子疾患ですので,様々な発症因子をつぶさにチェックする必要があります.その
代表格はやはりプラークですので,治療内容はいかにプラークを除去するか,またはプラー
クが付着しづらい環境を作るかです.このように歯周基本治療は個々のプ
ラークリテンションファクターを改善すること,と換言することができます.そして歯周組
織検査による再評価は,計画表に照らし合わせ,どれだけ治癒しているか.もしくは治療が
足りないのかを考える機会となるわけです.


③器具到達性について考えよう:スケーリング・ルートブレーニングの限界
歯周基本治療において入念にスケーリング・ルートプレーニングを行ったつもりでも.
オープンフラップ時に歯石の取り残しを発見することがあります.ポケット深さが3.75mm以上になると歯石の取り残しが多くなると報告しています.

一般的には歯周ポケット深さが4mmを超えれば歯石の残存率が多くな
る,と覚えておけば良いでしょう.質問にあるような病的な歯肉溝はいわゆる歯周ポケット
であり,歯周病原生細菌のすみかとなるほか歯肉溝浸出液中には組織破壊につながるサイ
トカイン(IL-lやTNF-α)や炎症性メデイエーター(プロスタグランジンE2)が存在します.
このため歯周病治療では健康な歯肉溝であるサルカスヘと改善する必要があるのです.

スケーリングやルートプレーニングでこれを達成できればよいのですが,残念ながら改善でき
なかった部位に対してピンポイントでスケーリングを行いたいとき,それがフラップ手術の出番
となります.


フラップ手術の目的は,根面に付着した汚染物質を確実に除去することに加え,
歯肉や歯根歯槽骨などの形態を改善することも含まれます.このため必ずしもポケットが
深くなく,出血を伴わなくても適応される場合があります.異常な骨形態を判断する力を養
うためには,まず6点法のポケット診査結果とエックス線写真上の骨形態を注視
してください.そして,フラップ手術中に実際の像を直視できたなら,頭の中でそれぞれを
一致させる確認作業をしましょう.経験していけば,術前に骨欠損形態が正確に
予測できるようになるはずです.そして,今まで気づかなかったような様々な細かい事象が,
実は病原因子となっていたことに気づくと思います.こういった’臨床経験の蓄積によって,
正確で迅速な診断ができるようになります.すなわち,最初は回り道のように時間がかかり
ますが,そのうち短時間でできるでしょう.

コメント