サポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)です.その際にメインテナン
ス間隔についても再考しましょう.
継続的な管理を開始する
まず,質問の状況をイメージしてみます.一連の動的歯周病治療が終了した時点で。炎症
症状はなくても4mm以上の歯周ポケットが残存している状態は,実際の臨床でよくみられ
ます.そして.口腔内環境は常に変化するものであり、治療開始時に高かったモチベーショ
ンも下がっている可能性もあります.治療の行き届いた口腔内状態を維持することは,われ
われ術者と患者さんの共同作業であり,継続するためには努力が必要です.このため歯周ポ
ケットで何が起きているのかを理解することは,良好なメインテナンスを持続する際の重要
なヒントとなります.
②歯周ポケット内の歯周病原菌
歯周病はいわゆる感染症として認識されていますが,詳しくは内因性の混合感染です.
腸管出血性大腸菌である,100個程度が体内に入っただけでも症状を発症するほど非
常に強い感染力を持ちますが,これは外因性感染の代表例です.しかし,歯周病は宿主に常
在している菌のバランスが崩れ数種の歯周病原菌が優位になり発症に至るため,内因性感染
といわれます.病原性自体もさることながら,骨吸収などの組織破壊は大部分が宿主の免疫反応の結果であることを再認識しましょう.このことから,動的治療はもちろん,メインテナンスや支援的治療期間に移行しても歯周ポケット内細菌を量的に少なく保つことの重要性が理解できると思います.
③メインテナンス間隔の根拠とは?
炎症兆候もない場合はメインテナンスがしやすいですが,特に歯周外科治療後では長い上皮性付着を伴った形態で治癒することが多く,支援的療法としてサポーテイブペリオドンタルセラピーが適用されま
す.一度健常になった歯肉溝内の細菌叢でも,残念ながら時間の経過とともに悪いほうに後
戻りすることが知られています.その間隔については部位やその数,ポケットの深さ,宿主
の個人差などの要因があり一様にはいえません.このため、残存歯数や補綴範囲,患者の健康状態を総合的にみたうえでその間隔を増減することが臨床的な決定方法といえるでしょう.
③文献チェック:歯の喪失率とメインテナンスとの関連
ではメインテナンスはどれだけ効果があるのでしょうか?過去の観察的研究では,歯周病
であっても治療しなかった群。歯周病治療をしたがメインテナンスが行われなかった群。歯
周治療後にきちんとメインテナンスが行われた群に対し,歯の喪失率が算出されました.
歯周病をほうっておけば10年で4本弱をなくしてしまうところを,メインテナンスを
しっかり継続すれば喪失歯は1本程度に抑えられることを示しています.筆者も大学病院で
専門的な歯周病治療を受けたあと,メインテナンスのために継続的に来院する患者さんを対
象に同様の調査を行ったところ,10年あたり1.2本とBeckerらの報告と同様に少ない喪失率
を達成できていることがわかりました.
残存した深いポケットには再度スケーリングやルートプレーニング,局所薬物輸送システ
ム(localdrugdeliverysystem,LDDS)など状況に応じて対処し,アタッチメントロスが進
行するような場合はやむを得ず基本治療からやり直すこともあります.これを最小限に抑え
るためには定期的なメインテナンスが重要
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