臼歯の齪蝕は直接修復(コンポジットレジン修復)と間接修復(インレー修復)のどちらが良いか.


まず,齪蝕の大きさをよく確認しましょう.

隣接面の齪蝕は隅角を超える窩
洞か,マトリックスを用いることができるかどうかで直接修復か間接修復か
を決定します.


③臨床のポイント
術前に視診・エックス線写真(隣接間の齪蝕検査はバイトウイング)や症状などから、う蝕の大きさを診査し直接修復(以下コンポジットレジン修復)か間接修復(以下インレー修復)かを決定します.基本的に防湿可能な部位,すなわちラバーダム装着ができる歯は直接修復が可能です.また同じ窩洞で直接修復と間接修復を比較した場合,直接修復の方が接着強さは高いので、可及的に直接修復を選択すべきでしょう.しかし‘直接修復は多くの場合術式が煩雑になるため,術者のスキルによっては間接修復を選択した方が確実
な症例もあります.


1)1級窩洞
臼歯咬合面(1級窩洞)に対するコンポジットレジン修復とインレー修復の臨床成績に有意な差はありません’).しかしコンポジットレジン修復は,M1の理念に基づいてう蝕のみの除去を行う修復法です.そして確実な接着操作を行うことによって健全歯質を可及的に保存し,審美的な修復が可能です.よって,臼歯咬合面(1級窩洞)に対してはコンポジットレジン修復を行うことが望ましいでしょう.


2)2級窩洞
臼歯隣接面(2級窩洞)に対するコンポジットレジン修復とインレー修復の臨床成績にも,有意な差はありません.よって1級窩洞と同様コンポジットレジン修復を行うことが望ましいでしょう.しかし隣接面齪蝕の大きさや部位(歯肉縁に近いかどうか)によっては,確実な接着操作や隣接面形態の付与が難しいことがあります.防湿が行えるのか,マトリックスやウェッジなどを適切に設置できるかをよく観察します.

隅角を超える窩洞であればインレー修復を選択した方が確実な治療を行うことができるでしょう.


②概略的なことについて
1)コンポジットレジン修復
(1)防湿
コンポジットレジン修復は接着修復です.適切な接着修復を行ううえでは防湿が必要になります.ラバーダム防湿が可能であればコンポジットレジン修復を行うべきでしょう.1級窩洞は対象歯のみのラバーダム防湿で修復可能です.2級窩洞の場合は複数歯のラバーダム防湿が必要で.最低3,4歯行った方が修復操作が行いやすくなります.
(2)接着操作
使用するボンディング材の特徴を確認しましょう.メーカー指示通りの塗布時間,確実なエアーブローなど接着ステップ.を正確に行うことが接着修復の成功の鍵となります.
(3)2級窩洞の大きさと難易度
図2のように,隣接而齪蝕の大きさと難易度は比例します.コンタクトが健全歯質で保存されている場合はコンポジットレジン修復の適応です.

コンタクトが失われている場合,隅角を超える窩洞の場合,マトリックスを設置できるかどうかで判断します.
また,窩洞の位置が歯肉縁上か縁下かもよく観察します.

歯肉縁下に及ぶ窩洞ではインレー修復が適応になる場合がほとんどです.


2)インレー修復
コンポジットレジン修復の適応でない場合は.間接修復(インレーやアンレー修復)の適応となります.間接修復の注意点は,適切な支台歯形成と印象採得です.とくにフィニッシュラインが歯肉縁下に及んでいる場合は,支台歯形成時に歯肉を傷つけないようにしましょう.歯肉を傷つけ出血している場合は止血剤や圧排糸を用いフィニッシュラインを明示してから印象採得を行います.


③実際のステップの注意点
1)コンポジットレジン修復
正確な接着操作とマトリックスの設置に注意を払いましょう.感染歯質の除去とマトリックス設置には少し時間がかかるでしょう.しかしそのあとの接着操作とコンポジットレジン修復は,防湿の観点からも必要最小限の時間で素早く行います.
ボンディング材使用時の注意点は,確実なエアーブローを行い,ボンディング層をできる限り薄くすることです.とくに1ステップ型のボンディング材はその厚みが厚いと接着強さが低下してしまうものがあります.メーカー指示に従い適切な強さのエアーブローを行いましょう.
また,フロアブルレジンを用いる際は,気泡が入っていないかよく観察しましょう.


2)インレー修復
インレー修復で気をつけることは,適切な樹洞形成と印象採得です.感染歯質を除去したあと裏層し、必要最小限の形成になるよう心がけます.特に咬合面歯質の保存に努めます.
印象採得の際は,フィニッシュラインを明示し,印象材の粉液比や硬化時間などを厳守するようにする

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