その透過像は根尖性歯周炎である可能性がありますが,その原因を特定する
ためにもう少し,情報を集めましょう.患歯が歯髄壊死している場合には歯内
療法が必要となりますが,根未完成歯の場合には再生歯内療法の適応も考慮
しましょう.
臨床のポイント
まず第一に,デンタルエックス線写真における根尖部透過像の原因はどこにあるのか.本
当にその歯が原因なのか,あるいは別な隣在歯が原因なのかを丁寧に調べる必要がありま
す.診断はデンタルエックス線写真という一つの情報から決定することは決してできません
ので,主訴や臨床検査そして歯髄診等得られるすべての情報を統合して判断します.デ
ンタルエックス線等の資料は,そうした情報による診断を確認するために使用するもので
す.特にデンタルエックス線写真では.解剖学的櫛造物との位置関係により,正常組織が
様々な病変に見える場合があります(オトガイ孔と根尖が近接して根尖病変に見えるような
場合など).さらに隣在歯の病変が波及することによって,正常な歯に根尖病変様透過像が生
じることもありますので,慎重な診査が必要です.
透過像の診断を行うための検査手順
根尖部に透過像があるということは、一般的に患歯の歯髄壊死による根尖性歯周炎である
と考えられます.つまり,疑われる歯とその周辺に失活歯がないかどうかを調べることが診
断への近道になります”歯内療法における一般的な診断方法と変わりありませんが,以下に
その検査手順を示します2).今回の場合は特に歯髄診に重点を置いて評価することになりま
す.
1)問診
・主訴(症状,部位,痛みの程度・持続期間、刺激への反応緩和の有無等)
・現病歴(症状発現の時期,原因として考えられること,症状の推移,受診歴,投薬等)
・既往歴(全身的な基礎疾患やアレルギーの有無等の既往歴,過去に受けた歯科治療時
の麻酔や偶発症の有無等の歯科的既往歴)
2)臨床的診査・検査
・視診(顔而の対称性,軟組織の状態(腫脹やサイナストラクトの有無等),
歯周組織の状態硬組織の状態(齪蝕の有無と実質欠損の状態・深さ,クラックや咬耗の有無,修
復物の装着時期等)
・触診(打診,歯周組織検査:歯周ポケットプロービング,排膿の有無動揺度),
咬合診査(早期接触の有無フレミタスの有無等)
・歯髄診(寒冷診査温熱診査電気歯髄診)
・エックス線検査(デンタル,バイトウイング,CBCT:通法によって原因不明な場合等)
・その他必要な場合(トランスイルミネーションテスト,麻酔診切削診)
③患歯の特定および治療
前述の検査によって患歯が特定されたならば,通法に則り歯内療法を適応します.しかし.
患歯の特定が難しいこともあります.原因が分からない状態で治療をしてはならず,そのよ
うな場合には焦らずにCBCTによる検査の実施や,専門医への紹介を考える必要もあるで
しょう.
また,既根管治療歯における症状のない根尖透過像の場合には,さらなる注意が必要です.
透過像=根尖病変ではありませんので,
すぐに治療介入するのではなく,その透過像の活動性を経時的に評価する必要があります.
具体的には数カ月(2~3カ月程度)後に再度デンタルエックス線検査を行い,初診時のものと比較します.
初診時の透過像が拡大傾向にあるのか(要治療と判断),または小さくなっているのか(経過観察と判断:過去の大きな病変が治癒に向かっている途中かもしれません.問診からも予測しましょう),
全く大きさが変わらないのか(経過観察と判断:嬢痕のような長期的に変化しない透過像)なのかを診ます.
若年者で根未完成歯の場合は,たとえ根尖病変があっても,すぐにアペキシフィケーショ
ンをせず,再生歯内療法を適応することによって一部歯髄の保存と歯根の成長の可能性があります。
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