即時義歯と抜歯後に義歯の新製に着手するのではどちらがいいか

抜歯後に義歯の新製に着手するのが一般的ですが,抜歯部位,抜歯本数,

歯後の口腔内状態によっては即時義歯が適切な場合もあります.審美性,

能,支台歯の状態皎合支持域および下顎位を確認しましょう.

⑪臨床のポイント

教科書には,外科的前処置である抜歯を行い,顎堤の治癒期間を経てから義歯を新製します.最初のうちは,義歯の設計,補綴的前処置最終印象採得,咬合採得および義歯装着などの義歯製作過程を一つひとつ確実に行うべきであることを考慮すると,抜歯後に義歯新製を行うことが適切と考えます、ただし,抜歯部位が治癒するまでの審美性岨噛機能および構音機能の低下や障害の発生が避けられない場合には叩時義歯製作が適切である症例も存在するのが実際です.

さて,どのようなときに即時義歯を新製するのでしょうか?

抜歯により,

1.審美性や咀嚼・構音機能の低下や障害が予測される,

2.残存歯での咬合支持が喪失する.

3.残存歯や顎関節への負担が予測される,

4.現在使用中の義歯の修理が不可能である,

5.無歯顎になる.

これらのような症例では即時義歯を考えてみてもいいかもしれません.

では,どのようなときに抜歯後に義歯を新製するのでしょうか?

抜歯を行っても,審美性,l・構音機能|咬合支持が保たれ,残存歯や顎関節への負担が

予測されないこれらのような症例では抜歯後に義歯の新製を第一選択として治療計画を立

案します.抜歯1週間後には前処置および最終印象採得が可能なので,無理に即時義歯を製

作するくらいなら急いで通法の製作方法にて義歯を新製するほうが患者さんだけでなく歯科

医師にとってもストレスが軽減されることも一理あると思います.

両方の義歯に共通して断言できることは,「補綴的前処置の亜要性」です!

②即時義歯についての説明

即時義歯とは,前歯部の抜歯や多数歯にわたる抜歯により審美性や機能の低下もしくは障

害が予測されるときに,抜歯前に製作される義歯のことです.即時義歯は,抜歯後形態を予

測した作業用模型上で製作され,抜歯と|可時に装着されます(図2)即時義歯は,暫間義歯

として使用され,抜歯窩が治癒し補綴的前処置を施した後,最終補綴治療に移行します.

M|]時義歯装着後は,抜歯窩の吸収による義歯の不適合が起こります.また,抜歯窩の治癒

促進や抜歯窩への機械的刺激の遮|析のため,ティッシュコンディショニング(粘膜調整)を

行いますが,抜歯窩に入った粘膜調整材はハサミもしくはデザインナイフなどで除去しま

す.

最近では,光学印象法が普及してきているため,この方法を利用することにより,印象採

得操作が不要になってきています.印象撤去時の残存歯への負荷を可及的に少なくできるの

40

噸浮繍 ‘’『職

石療

(松本1榊:|,大学耐了’二IF『志先41三のご厚意による)

図2抜歯と同時に装着された上顎即時義歯

(松本歯科大学厨|:-冊志先生のご11メ激による)

図1抜歯により審美性と機能が低下した口腔内所

で,即時義歯製作では光学印象法が第一選択となる日も近いと思います.

③即時義歯製作で注意すべきこと

1)補綴前処置は適切かつ確実に行うこと

特に即時部分床義歯となる場合,ガイドプレーン形成やレストシート形成だけではなく,

歯冠形態の修正や維持力発現のためのデインプル形成など‘部分床義歯製作と同様に補綴的

前処置を行うことが重要です.抜歯が前提のネlli綴処置なので,義歯の設計に基づいて,抜歯

される歯の形態修正を-‘一分に行っておくと即時義歯の装着が容易になることもあります.

例えば,ブリッジの抜歯と同時に即時義歯を装着する場合には,印象時には前処置として

ブリッジの隣接面部を削合してクラスプが入るためのスペースをあらかじめ付与しておくと

クラスプと支台歯の干渉がなくなり,さらには対合歯とクラスプの早期接触や咬頭干渉を防

ぐことができます.他に‘ブリッジの切断と一方の支台歯の抜歯を行い,他方の支台歯を保

存して即時義歯の装着をする場合には,ブリッジ切断部と保存する支台歯の連結部にレスト

シートを形成します.この操作により,即時義歯装着時のブリッジ切断が少し容易になり,

義歯には歯根膜支持を与えることができます.

2)最終印象採得で抜歯をさけるためになすべきこと

抜歯予定の歯が印象採得の操作に耐えうるか,が一番気になるところです.ですから,抜

歯前に患者さんには,「印象体撤去の際歯が抜けるかもしれない」ことをご理解いただくこ

とです.必要に応じ同意書を用意しておくと安心ですね.最終印象採得に先立ち,残存歯周

囲の不要なアンダーカットはユーティリティーワックスもしくは寒天印象材などでブロック

アウトすることは必須です.最初のうちは,可能なら最終印象採得時に抜歯該当歯を保存す

る隣在歯と固定したり,もしくは抜歯予定部位に相当する部分を被覆するトレーに穴を開け

印象体撤去時に直接指で抜歯予定部位を押さえたりすると印象体撤去の際に抜歯となる危険

性を減少できると思います

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