根管長をEMRで測定していますが,反応が不安定です.どうしたら良いですか.

⑪臨床のポイント

根管治療を行う際は,根管長の測定および作業長の決定が,根管治療の予後を左右するた

め大変重要な手順になります.近年,正確な根管長を測定するため,電気的根管長測定器を

使用する方法が第一選択となっていますが,正しい使用法を知っていますか?

電気的根管長測定器の反応が不安定となる主な原因は,歯冠部周囲組織への測定電流の

リーク(漏電)です.このリークを防ぐことで,測定の安定性が格段と上昇します‘

電気的根管長測定器の原理を十分理解することで正しい使用法をマスターし,測定時の環

境を整えることで正確な作業長を測定しましょう.

②正しい使用法をマスターしましょう.

1)電気的根管長測定器の原理

電気的根管長測定器は,口腔粘膜と根管内に挿入したファイル間のインピーダンス

(電気抵抗値)を測定するもので,正確な測定には。根管内における電気応答について十分な

理解が必要です.ファイル先端が歯根表面に達した時,年齢,歯種に関わりなく,ほぼ一定の

電気抵抗値を示すことを利用することで,根尖の位置を探索し,結果として作業長を測定し

ています

2)リークを防ぐ

電気的根管長測定器を用いて,正確な作業長を測定するには,歯冠部周囲組織へリークの

防止が最も重要です.根管内を湿潤状態に保ち測定する必要性があることから,次亜塩素酸

ナトリウム液等の根管洗浄液を使用しますが,髄腔内に根管洗浄液を満たすことで歯冠部周

囲組織へのリークが起きやすくなり,反応が不安定になってしまいます.歯冠部歯質の崩壊

がある場合は,隔壁を施すなど,周囲組織へのリークを防ぎ,ラバーダム防湿下で電気的根

管長測定器を使用する事が大切です.また,根管内の洗浄液も髄腔いつぱいまで満たすこと

なく,根管口付近までに留めて使用しましよう.

③それでも不安定だったら…

歯冠部周囲組織へリークを防ぎ,測定の環境を整えても,電気的根管長測定器の反応が

不安定なこともありますその理由として。以下のことが考えられます.

1)太い根尖孔や根尖孔の破壊

電気的根管長測定器は,インピーダンス測定器であるため,根管形態や根管内の環境に

よっても測定値に誤差が生じることがあります.太い根管や根尖孔が破壊されているような

場合,太い根管や根尖孔に適合した太めのファイルを使用し測定することで,より安定して

測定できます.

2)根管内容液の種類

測定時に根管内に満たされている根管洗浄液の通電性が悪いと測定値に誤差が出やすいの

で,通電性の高い次亜塩素酸ナトリウム液を使用し,根管内の環境を整え,測定することが

大切です.

3)根管内での穿孔

根管内での穿孔は,根管系と歯周組織の人工的な交通であるため,この穿孔部付近では,

根尖の指示値と近い値を示したり,測定値が不安定になります.

⑧適切な作業長とは?

根管治療における適切な作業長は,一般的に根尖部の根尖最狭窄部までが望ましい

とされています.この部位は,根管内組織と根尖周囲組織の境界いわゆる象牙質・セメント

質境と考えられています.電気的根管長測定器は,自動的に作業長を測定する装置ではなく,

根尖部のインピーダンスを測定する装置であるため,実際には誤差を生じることを頭に入れ

ておかなければなりません.そのようなことから,電気的根管長測定器の補足としてエック

ス線写真を利用し,最終的に作業長を決定することが非常に大切となります.

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