クラウンと支台歯の境界が明確になっていないのかもしれません．分割は浅
すぎても深すぎても上手くいきません．セメント層を確認し，できるだけク
ラウンだけを切断するように，頬舌的に分割しましょう．
⑪臨床のポイント
日常臨床でクラウンを除去する機会は意外に多いものです．できるだけ短時間で行いたい
ところですが，自分で装着したクラウンでない限り、材質厚さ，支台歯の状態などが明確に
分かりません．
②クラウンと支台歯の境界を明確に
クラウン除去で重要なのはクラウンと支台歯の境界を見極めることです．そのためにはク
ラウンと支台築造体の材質を把握することが第一歩となります．
メタルコアにメタルクラウンが装着されていたり，
レジンコアにCAD／CAM冠が装着されている場合はこの境界を視認することが困難になります．
術前に口腔内所見およびエックス線検査で可能な限り当該歯
の状態を確認することにより，落ち着いて除去作業を行うことができます．
③臨床操作
1）支台歯の確認
エックス線検査で支台歯が生活歯か失活歯か確認します．失活歯の場合は支台築造材料を
把握する必要があります．エックス線写真でポスト部を確認することにより，メタルコアな
のかレジンコアなのかを判断することができます．クラウンの材料と支台築造体の材料が異
なる場合はクラウンと支台歯の境界の見極めは比較的容易ですが，同じような色調の材料で
製作されている場合は切断時に注意深くセメント層を見極めることが重要となります．
2）クラウンの切断
（1）メタルクラウン／前装冠の場合
切断にはクラウン除去用カーバイドバーを使用し，頬舌的にスリットを入れます．頬側面
歯頚部から咬合面にかけてカーバイドバーにて切込みを入れ，舌側面に達するまで切
断し，近遠心的に分割します．レジンコアの場合は色調を基準にクラウンだけを切断
します．
メタルコアの場合はセメントラインがクラウンと支台歯の境界になるので，これを
見逃さないように切断作業を行う必要があります．この境界を見逃すと．支台歯を傷
つけることになります．切削が終了したらスリットに除去用ドライバーの先端を挿入し，少
しずつ捻転させながらセメント層を破壊します．スリット幅が拡大してクラウンの動揺が確
認できたら，回転幅を大きくしてクラウンを脱離させて除去します．除去しにくい
場合はインレー・クラウンリムーバーを使用することもあります．
(2)セラミッククラウン／レジンクラウンの場合
ダイヤモンドポイントを使用して分割線を入れます．分割線の入れ方はメタルクラウンと
同様です．ジルコニアクラウン以外,切断自体はメタルクラウンより簡単ですが,接着材と
してレジンセメントを使用していることが多いので，境界の判定が難しいことがあります．
また支台歯とクラウンが強固に接着している場合はクラウンが一塊では除去できず，いくつ
かの破折片として除去されることもあります．
⑧マスター･テクニック
1）除去前に一手間かける
プロビジョナルクラウンが必要な場合は除去前に回転トレーで印象採得しておくと，プロ
ビジョナルの製作が容易になります．
2)除去できないときに焦らない
上記の方法で除去できない場合。いくつかの原因が考えられます‘クラウンの切断が不完
全な場合が多いので，頬側歯肉縁下や咬合面の舌側への切断が確実にできているか碓認して
下さい．またクラウンの歯冠長が短いときはポストクラウンである可能性もあるので，その
場合はメタルコアの除去法に準拠して除去操作を行ってください．
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