それは支台歯形成,印象採得に問題があるのかもしれません.作業用模型を
確認し,模型上でのクラウンの適合をチェックしましょう.口腔内ではまず
隣接面コンタクトの適合状態を確認することが必要です.
③臨床のボイント
試適を行うために完成したクラウンを支台歯に挿入したものの,所定の位置まで入らない
という状況は誰でも経験する可能性があります.咬合調整を行うためにはクラウンが支台歯
に適合している必要がありますので,適合に不備がある場合にはどこに原因があるか確認し
て,チェアサイドで対応可能か決定しなければなりません.
②どこにエラーがあるか
まず試適前に技工所から届いたクラウンが作業用模型に適合していることを確認しておく
必要があります.この時点で適合していない場合は再製作が必要となるでしょう.しかし模
型に適合しているクラウンが口腔内に装着できない場合,模型と口腔内の状態が異なってい
る可能性が考えられます.
診療における一連の行為の中で,特に注意すべきステップは,
l)クラウン製作前
(1)支台歯形成
(2)印象採得
2)クラウン製作後
(1)作業用模埋上での適合
(2)試適時のクラウン内面および隣接面
と考えられます.
③臨床操作におけるチェックポイント
1)支台歯形成
支台歯形態を口腔内でチェックするのは困難です.慣れない間は簡単な例と思っても支
台歯形成を1回で終了することは避けましょう.一度支台歯形成を行ったら研究用模型を製
作し,様々な視点から支台歯形態を確認することが重要です.アンダーカットの有無軸面
側斜度対合歯とのクリアランスなどを模型上で確認し,修正部位を頭に入れたうえで最終
的な支台歯形成を行うとよいでしょう.
2)印象採得
支台歯形成に続いて印象採得も重要です.どのような印象材を使用する場合でも術者が最
終硬化するまでトレーをしっかり保持しておくことが重要です.トレーを口腔内に挿入した
後,患者さんに噛んでもらって保持させている光景を見かけますが,術者が責任をもって保
持してください.口腔内から撤去した印象体は適切な感染予防処置を行ったのち,ハイドロ
コロイド印象材であれば可及的に速やかに石膏注入を行います.印象面に触れるのは厳禁
で,大切に取り扱いましょう.
3)作業用模型上での適合
歯型とクラウンの適合状態を確認します.歯型上でクラウンが動くことがないか.歯型に
塗布されたスペーサーが剥れていないか確認しましょう.大きく剥れている場合,内
面が収縮して小さいクラウンとなっている可能性があります.またすでにマージン部が不適
合となっている場合があるので併せて確認します.
4)試適時のクラウン内面および隣接面
適切な支台歯形成,印象採得を経て製作された作業川模型に適合しているクラウンであれ
ば問題なく口腔内に装着することができるはずです.jリf定の位置に装着できない場合はまず
隣接面コンタクトを検査します.隣接面は通常50μmのコンタクトゲージが抵抗をもって挿
入できるように調整します.実際には咬合紙を使用します.20~30〃mの厚さの咬合
紙を隣接面に挿入し,それを引き抜くことでクラウン隣接面に色がつくので.それを削除し
ていきます.最終研磨が終了した時点で適切な接触状態にする必要があるので,咬合
調整の段階では少しきつめにしておいて,研磨を進めながら接触状態を調整していく必要が
あります.通常は隣接面コンタクトの調整だけで所定の位置に装着できるはずです.ただし
作業用模型上でのチェックで内面が不適合となっている可能性がある場合には,適合診査材
を使用してクラウン内面の適合状態の検査を行います
③マスター・テクニック
クラウン・支台歯を清掃する
クラウン内、や支台歯に汚れや仮着材が付着していると,それだけで適合が悪くなりま
す.クラウン内のサンドブラスト処理や歯面清掃などをしっかり行って
から試適作業に移行してください.
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