義歯の試適では何をどこまで確認すれば良いか

ろう義歯試適では審美性,顎間関係,人工歯排列位置,構音機能を確認し,

最後に患者さんと一緒にこれらを確認しましょう.

⑪臨床におけるろう義歯試適

ろう義歯は,完成義歯と同程度に審美的形態が付与され,機能的形態が回復されています.

また,ろう義歯の研磨面形態は,義歯の維持や安定にも影響を及ぼします.以上より、ろう義

歯の口腔内試適は.審美性と機能の確認および完成義歯の維持や安定を予測するために重要

なステップです.

②口腔内試適を行う前に知っておくべきこと

1)ろう義歯の場合

ろう義歯を口腔内試適中は,弱い力で咬むことを忠者さんに指示しましょう.強い咬合に

より人工歯の移動やろう義歯の変形が起こるからです.また,ろう義歯はブロックアウトや

リリーフにより完成義歯に比べ少し緩いことも患者さんに説明します.ろう義歯の安定が不

良な場合には,ファストンなどの粉末状入れ歯安定剤を使用するとろう義歯

が安定します.最初のうちは,維持装置を設置したろう義歯を用いて口腔内試適を行いま

しょう.なぜなら,ろう義歯が口腔内で安定し,ろう義歯試適の操作が非常に円滑になるか

らです.

③チェアサイドで確実に確認するべきこと

1)審美性についての確認事項

前歯部欠損症例では,審美性について患者さんからの主観的評価はとても重要です.人工

歯の色調形態,大きさや排列位置・角度などは残存歯と調和していますか?前歯部切縁や

正中の位置人工歯の長さや露出度被蓋関係歯頸線の位置や歯肉形態などは顔貌残存歯

および残存組織と調和していますか?リップサポート,微笑線(スマイリングライン)・笑線

(スマイルライン)および鼻唇溝・人中・オトガイ唇溝は自然ですか?患者さんと鏡で一緒

に確認します.必要に応じチェアサイドで修正し,患者さんから納得いただきます

2)顎間関係についての確認事項

ろう義歯試適時には,咬合器上での咬合接触関係が口腔内で再現されていることを確認し

ます.咬頭嵌合位で咬合高径,水平的顎間関係,咬合接触状態および被蓋関係などを確認し

ます.咬合高径を回復する症例では容易に嚥下できますか?また,早期接触があるとろう義

歯がわずかに移動することもあるので,咬合紙を用いてライトタッピングでの咬合接触を検

査し,必要に応じ咬合調整します

よくやりがちなのは,上下顎全部床義歯症例において,下顎を前方位にて咬合採得するこ

とです.人工歯排列したろう義歯は台無しになります.

最初のうちは,

上下顎前歯部人工歯のみを排列したろう義歯を製作し,「前歯部排列を確認するための口腔

内試適」と「2回目の咬合採得」と考えてみてもいいかもしれません.

3)人工歯排列位置,構音機能についての確認事項

人工歯排列位置について,下顎臼歯部人工歯は舌背の高さと調和していますか?舌房を確

保していますか?構音機能について,歯肉形態は適切ですか?人工歯排列位置・歯肉形態と

構音機能には関連があります.必要に応じパラトグラムによる適切な口蓋形態の設定も重要

です.

④ろう義歯試適のまとめ

義歯の試適の段階で「あれっ違ったかも…」となることがあるかもしれません.ではど

こに間違いの原因があったのでしょうか?ろう義歯の試適に至るまで,最終印象採得,咬合

採得咬合器装着,人工歯排列,複印象採得,ワックスアッフ.,鋳造など,多くの臨床操作や

技工操作があります.いきなり「義歯の試通だけうまくいかない」ということは考えにくい

です.一つひとつの操作を確実に行うことが最も重要です.

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