義歯適合試験材を使った,どう読み取るか

完成義歯装着時の適合試験と不適合が疑われる義歯に対する適合試験に分け

て考えましょう.

適合試験材の特徴を理解して,患者の顎堤義歯および咬

合などを確認してから義歯適合試験を行いましょう.

①臨床のボイント

1)完成義歯装着時における義歯適合試験のポイント

ポイントは2つです.lつめは,「義歯による疼痛除去」です.「痛い」のは補綴治療に限ら

ず,誰もがつらいからです.2つめは,「義歯床粘膜面と顎堤粘膜の均等な接触」です.「良好

な装着感」はすべての義歯使用者が願うからです.

2)不適合が疑われる義歯に対する義歯適合試験のポイント

適合試験を読み取る際にやっかいなのは,義歯装着から時間が経過し,義歯不適合が疑わ

れる症例です.

患者さんの訴え(例えば,「義歯が緩い」もしくは「義歯によるアゴの痛み」など),義歯使用年数,咬合状態およびこれまでの処置経過など

から総合的に判断します.

②義歯適合試験材についての説明

1)ペースト系適合試験材について

現在臨床において,「デンスポット,P.IP、ペースト)」や「デンフイット」などのペースト系適合試験材が使ハ1されております.

前者は主に全顎的な適合試験に,

後者は主に褥瘡性潰瘍のような局所的な適合試験に使用されます.

この適合試験材の長所は,

「適合試験が迅速である」,

「義歯床粘膜面と顎堤粘膜の接触や不適合(間隙)を定性的に検査できる」.

「細かい接触を検査できる」,「試験材が薄い」,

「義歯の着脱時や動揺時の接触を検査できる(動的検査)」などがあげられ,

また短所は,

「義歯床粘膜面と顎堤粘膜の不適合(間隙)の量を判断できない」,

「リライン前の適合試験には不向きである」などがあげられます.

2)シリコーン系適合試験材について

現在臨床において,フイットチェッカー.トクソーフイットテスターなどのシリコーン系適合試験材が使用されています.この適合試験材の

長所

は,「義歯床粘膜面と瓢堤粘膜の接触もしくは不適合(間隙)を定量的に検査できる」,

「リライン前の適合試験に適切である」などがあげられ,

また短所は,

「練和操作や硬化時間により適合試験に時間を要する」,

「練和操作や義歯の口腔内挿入に時間がかかると適合試験材が厚くなる(=失敗)」,

「適合試験材硬化時における適合試験(静的検査)である」などがあ

げられます.

③義歯適合試験をどう読み取り,何を考え,そして処置に活かすかについて

1)完成義歯装着時における義歯適合試験の場合

完成義歯の装着時には,まずペースト系適合試験材により義歯と弧堤の強い接触部のみを

“定性的”に検査し,義歯粘膜面や義歯床縁の強い接触部位を削合することで,義歯着脱時お

よび義歯装着時の嬉痛を取り除きます、

ただ義歯床粘膜面の削合を繰り返すだけでは,義歯不適合や義歯床下への食祗貯留などを招くのでここでは削合しすぎないことです.

次に,咬合調盤を行い左右両側での均等な咬合を確立したら,シリコーン系適合試験材で加圧部位だ

けでなく.不適合部位および不適合量も“定量的”に検査します.

欠損部位の抜歯時期や精密印象採得方法なと、は義歯床と顎堤の適合を予測する重要な判断

材料です.義歯装着に先立ち,これまでの経過や研究用模型などからも情報を積極的に

得ましょう.

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