義歯が破折してきました.修理方法が分からない

咬み合わせや適合の不良が原因かもしれません.また,義歯装着が

長期間の症例では,破折要因は複合的となります.義歯設計の適正性と咬合

関係や適合について検査し,適切に義歯修理を行いましょう.

①臨床のポイント

義歯破折の多くは,咬み合わせに対する義歯の強度不足や義歯床の不適合

による動揺が原因で生じます.適切な義歯設計により義歯に充分な強度を確保することが

重要です.

しかしながら,長期使用した義歯では,適切な義歯設計であっても顎堤吸収など口腔

内環境の変化や義歯材料の経年劣化により,義歯破折の頻度は高くなります.

1)義歯床の破折

義歯破折で最も高頻度です.長期使用義歯の床破折は咬み合せが原因のことが多いため,咬合関係を含めた修理が必要となります.まず義歯床が破折したら、接着剤(アロンアルファ)などで破折部の一面を適合させ、硬化したら反対側を削合し、破折部をレジンに置き換えていきます。

まず義歯床が破折したら、接着剤(アロンアルファ)などで破折部の一面を適合させ、硬化したら反対側を削合し、破折部をレジンに置き換えていきます。置き換え終わったら、接着した反対側もレジンに置き換えていきます。

この時、ワイヤーなどの補強線を破折面に対し垂直に入れると強度を増すことができます。

修理が終わったら、口腔内に戻し、内面適合、かみ合わせを確認します。

もし臼歯部人工歯の過度の咬耗(アンチモンソンカーブ)により.義歯床の正中破折が生じていると考えられている場合は,破折修理と併せて、咬合面再形成を行うことで再破折の防止を図ります.

また適合が悪い場合はリベースなどを見据え、Tコンなどで粘膜調整していきます。

頻繁に落として破折させてしまう場合もあるので、そういった場合は義歯扱いの指導も行います。

2)人工歯や支台装置の破折(脱離)

義歯の人工歯が外れただけなどの場合、レジンで再着できたり、修復できたりします。

ただ、破折(脱離)の原因を探り,再発の防止を図ることが重要です.

支台装置の破折の場合、咬み合せや強度不足(不適切な設計)が原因であることが多く,応急修理だけでは長期的に良好な予後が得難いため,咬合関係の修正や強度の確保が必要となります.

支台装置を再製作し,直接法により修理する場合は,再破折(再脱離)が生じないように支台歯

形態の再修正と場合によっては支台装置の製作設計に留意します.

3)金属床義歯(フレームワーク)の破折:

金属床義歯床のフレームワークの破折は,鋳造欠陥又は顎堤吸収など口腔内環境の変化が原因となり生じます.

金属床はそもそも破折しにくく、修理の場合は難しいです。

設計と構造上の問題がない義歯であれば,適切な時期にリラインによる再適合を行うことで,破折の防止が期待できます.

②概略的なことについての説明

1)義歯床破折の原因と防止対策

(1)義歯床粘膜面の不適合(経年的な瓢堤吸収など):適切な時期のリライン

(2)咬合関係の不良(咬耗など):咬合面再形成,人工歯の置換

(3)強度不足(床用材料の劣化不適切な設計など):リベース,適切な設計,デンチャースペースの確保

(4)偶発的事故(義歯清掃中の落下など):患者指導,環境要因の盤術

2)人工歯の破折や脱離の原因と防止対策

(1)咬合関係の不良(咬耗など):咬合調整咬合面再形成,臼歯部人工歯の置換

(2)義歯床との連結強度の不足:適切な接着処理適切な設計

(3)偶発的事故(義歯清掃中の落下など):患者指導,環境要因の整備

3)支台装置の破折や脱離の原因と防止対策

(1)義歯の動揺による応力集中:リライン,咬合調整、咬合面再形成

(2)強度不足(支台装置材料の劣化,不適切な設計):支台歯形態の修正、適切な設計,支台装置の再製作

③義歯破折修理の詳しい一例

1)義歯床破折の修理(筆積み法による応急修理)

(1)破折部位の仮固定:①破折部が容易に復元できる場合は,口腔外で瞬間接着剤を用いて仮固定

破折面が容易に復元できない場合は,口腔内に破折片を戻して位置関係を確認のうえ,直接口腔内で常温重合レジンにより仮固定します.

(2)修理時のズレを防ぐため,シリコーンゴム印象材のヘビーボデイタイプ(または石

膏)を義歯床粘膜面に充填(注入)し,簡易模型を製作します

(3)ラウンドバーなどを用い破折線に沿って,充填(注入)したシリコーンゴム印象材

(または石膏)が露出するまで義歯床を少量削除します

(4)接着を確実にするため,接着性プライマーを修理部に塗布します.その後,レジンを

筆積み法で添加します.重合収縮による変形を防止するため,少量ずつ築盛(添加)

します

(5)加圧重合器などにより重合完了後,口腔内にて適合を確認のうえ,通法に従って形

態修正,研磨を行います.また,咬合関係の修正が必要な場合には,併せて咬合調整や咬合

面再形成を行います.

2)人工歯脱離の修理(人工歯の交換)

(1)咬合関係を確認し,人工歯を選択します

(2)ラウンドバーを用いて人工歯排列スペースを確保します。

(3)人工歯基底面に保持孔を付与し,義歯床と人工歯の接着界面に接着性プライマーを

塗布します.

(4)人工歯排列後,レジンを筆積み法で築盛(添加)します.重合収縮による変形を防止

するため,少量ずつ築盛(添加)します

(5)加圧重合器などにより重合完了後,口腔内にて咬合関係を確認のうえ,通法に従っ

て形態修正,研磨を行います

⑧要参照の分野:レジン床の補強線について

レジン床義歯では,金属床義歯のフレームワークの強度は期待できません.そのため,レ

ジン内部に破折線と水平になるように何本か補強線を埋入することで,破折防止が期待できます。

コメント